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【2023年1月号】Vol.8 太陽電池材料

2023/01/23

広報部

環境分野サムネイル

IKグループでは世界各国で、再生可能エネルギーの一つ、太陽光発電に関わるビジネスに取り組んでいます。
2021年7月号「環境分野への取り組み」で紹介した情三本部の取り組みに続き、第2弾として稲畑アメリカ、稲畑ヨーロッパの太陽電池材料の取り組みを紹介します。

稲畑アメリカ

太陽電池材料ビジネスに携わるメンバー

左から、
営業マネージャー Yoshi Satoさん
営業担当 Di Wuさん
ビジネスコーディネーター Sayaka Ozawaさん
副社長 Richard Sabehさん
ビジネスコーディネーターマネージャー Futaba Garzaさん

ー稲畑アメリカが太陽電池材料ビジネスを始めたきっかけは?
Richard:2000年初頭のドイツ政府が太陽光発電に力を入れ始めた頃、稲畑アメリカは稲畑ヨーロッパ、IKJと共に、太陽電池材料を供給できるサプライヤー探しに取り組み、中国のガラスメーカーと出会いました。そのメーカーの太陽光パネル用の保護ガラスを、世界10大モジュールメーカーの1社であるアメリカのA社に提案し、新サンプルを迅速に提供するなど新製品開発をサポートしました。その結果2011年に稲畑アメリカはA社のサプライヤーとして認定され、ビジネスが始まりました。

ー現在の稲畑アメリカの太陽電池材料ビジネスについて教えてください。
Richard:稲畑アメリカでは、テルル化カドミウムの太陽電池を製造するA社に、同中国メーカーの保護ガラスを販売するビジネスをメインとしています。現在の太陽電池は約9割がシリコン製で、複数のセルをつなげてモジュールを製造します。A社の太陽電池は、最初からモジュールサイズのガラス板に材料を塗布して製造するため、製造工程における炭素排出がシリコン系の太陽電池と比べて約1/2に抑えられます。大規模施設での利用に適し、発電施設などの公益事業に主に利用されます。
テルル化カドミウムを使った太陽光パネル製造工程の動画

ーアメリカの太陽電池市場と今後の稲畑アメリカの取り組みを教えてください。
Di:アメリカのエネルギー資源の割合は、化石燃料が6割弱と最大のシェアを占め、太陽光発電のシェアは3.9%と少ないです。アメリカでは、2022年から2032年の間に個人が太陽光発電システムを設置した場合、連邦税30%税額が控除される制度や、モジュールメーカーが米国製品を利用すると40%税額が控除される制度を導入したため、今後市場が拡大すると予想されています。
 通常、太陽光パネルのメーカーは主要製造国で消費大国でもある中国に製造拠点があります。A社は、唯一大半の部品をアメリカで製造しているので、税額控除が適用される可能性が大きいです。
 我々稲畑アメリカは、保護ガラスにとどまらず、モジュールメーカーにとってのワンストップショップの役割を果たしたいと思っています。モジュールメーカーが描くパネルデザインをヒアリングし、そのデザインに必要な材料を各国のIK拠点と協力して世界中から調達し提案できることが私たちの強みです。

Richard Sabehさん

Richard Sabehさん

美しい地球を孫の世代まで受け継ぐことが、私たち現役世代の責任だと思います。太陽光発電はその他のエネルギー資源と比べて環境に良いエネルギーです。IKグループが一丸となり太陽電池材料ビジネスに取り組むことで、未来に貢献できることがうれしいです。

Di Wuさん

Di Wuさん

2021年に入社したばかりで太陽電池材料のビジネス経験は6カ月と浅いですが、より良い未来づくりのために世界中からさまざまな材料を探して提案していきたいと思います。

稲畑ヨーロッパ

太陽電池材料ビジネスに携わるメンバー

左から、
営業担当 David Funaroさん
デリバリ担当 Jacky Sneouarさん
営業マネージャー 大石 一翔さん

―稲畑ヨーロッパが太陽電池材料ビジネスを始めたきっかけは?
大石:日本でお付き合いのあった日系電機メーカーが、2010年頃イタリアに欧州企業2社と合弁で太陽電池モジュール工場を設立し、そこに稲畑ヨーロッパが太陽電池材料を販売したのがきっかけでビジネスが始まりました。その後、日系電機メーカーと欧州企業1社は撤退し、残ったイタリアのB社の単独経営になりましたが、私たちは材料提案を続けたため、新たにB社のサプライヤーとして認定され、現在に至ります。

―EUの太陽電池市場と太陽電池モジュール業界の動向を教えてください。
大石:EUの太陽電池市場は、2010年初頭まで固定価格買取制度導入の影響で拡大しましたが、制度廃止と共に一旦縮小しました。しかし2018年以降、脱炭素を進める欧州政府の後押しと、設置コストの低下を主要因として市場は急回復しました。現在はウクライナ戦争に端を発するエネルギー不安を追い風に、さらに拡大が見込まれています。
 一方、2010年初頭に欧州に数多くあったモジュールメーカーのほとんどは市場縮小時に倒産・統廃合したため、現在は小規模な工場が多く価格競争力がありません。そのため欧州の大規模太陽光発電所に使用されるモジュールの多くは、中国をはじめとする輸入品になっているのが現状です。欧州の各社は輸入品に対抗すべく太陽光を効率良くエネルギーに転換できる付加価値の高いモジュールづくりにしのぎを削っています。

―現在の稲畑ヨーロッパの取り組みを教えてください。
David:私たちは銀ペーストや、封止材、導電性接着剤などの太陽電池材料を、主にB社が2023年に稼働する大規模工場へ供給します。私たちの扱う商材はHJT※と呼ばれる高効率なモジュール生産に必要な材料が多く、B社もHJTの生産を計画しています。他のモジュールメーカーとは異なり、自社で太陽光発電まで行うため、モジュールの売り残しがないという意味で、与信上の不安も少ないです。
 今後は、さらに多くの太陽電池材料を、モジュールメーカーに認定されるように技術開発にかかわる外部の研究機関との連携も重視しています。また欧州企業はESG経営を重視しているため、仕入先の材料メーカーに対して、二酸化炭素排出量、排水の管理、各種認証の取得、労働環境に関する調査のニーズを説明し、アドバイスすることもIKの重要な役割の一つです。

※ ヘテロジャンクションと呼ばれるシリコン系の高効率な薄膜型太陽電池

大石 一翔さん

大石 一翔さん

現在の稲畑ヨーロッパが取り組む太陽電池材料ビジネスは、諸先輩方の日本での関係構築があったからこそ成り立ったものです。ヨーロッパでは、再生エネルギービジネスに関わることで社会に貢献できる喜びを感じられる方が多く、やりがいを感じます。

David Funaroさん

David Funaroさん

ヨーロッパでは昨今ガス代が2~3倍に跳ね上がり、日常的にエネルギー問題が話題になります。そのような中、太陽光という、ある意味無償の再生可能資源を生かす一旦を担えることが幸せです。

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