【2023年4月号】Vol.9 太陽電池材料 Part2
2023/03/31
太陽光発電に関わる当社のビジネスとして、前号の稲畑アメリカ、稲畑ヨーロッパの取り組みに続き、稲畑上海とシンガポールの取り組みを紹介します。両拠点では、従来のPERC型より発電量の成長性と技術の将来性があるHJT 型太陽電池に注目して、銀ペーストをはじめとした太陽電池材料の拡販に注力しています。
稲畑上海
康さん
電子部では、ディスプレイ関連やエネルギー関連、各種工業・電子材料など情一・二・三本部の関連商材を扱っています。
―太陽電池材料ビジネスのきっかけは?
施:2015年頃から銀ペーストのサンプルワークをはじめ、今は中国大手太陽電池メーカー数社へ販売しています。太陽光パネルは、電力変換機器となる「セル」をたくさん並べて構成されますが、銀ペーストはその「セル」に使用され、セル全体コストの約2割を占める重要材料です。
—中国の太陽電池市場の特徴は?
康:政府の補助金政策に左右され、トップメーカーでも倒産や撤退を繰り返してきた歴史があります。けれど近年は世界的な環境意識の高まりから、補助金頼りではない需要が高まっています。中国政府は「2060年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標を掲げて、特に太陽光と風力発電に注力しており、今や中国は再生可能エネルギー発電量世界一の国です。
施:市場拡大に伴い業界の競争は激しくなっています。太陽電池の生産国は当初欧米中心でしたが、日本・韓国にシフトし、現在は8割以上が中国です。中国の太陽電池メーカーの約8割はPERC型※1と呼ばれる太陽電池を生産していますが、電力変換効率の上限に近づいており、これ以上の性能向上は難しいと言われています。
※1 Passivated Emitter Rear Contact技術の略称
—太陽電池材料ビジネスの今後の抱負は?
康:私たちの扱う銀ペーストを材料とするHJT型※2は、PERC型と比較して理論上の電力変換効率が高いので、開発が進めばPERC型と同等のコストで発電量をアップすることが可能です。他にも良品率、両面発電率、長期劣化が少ないなどの優位性もあります。2030年には約30%のシェア拡大が予測されているので、中国の太陽電池メーカー各社がPERC型からHJT型にシフトするタイミングを逃さずに、サプライヤーとして参入していきたいと思います。
施:中国の材料メーカーが台頭しはじめ、日本の材料メーカーを扱う私たちには厳しい環境ですが、太陽電池メーカーの開発情報をタイムリーに入手し、求められる技術に柔軟に対応して最先端のポジションを守りたいと思います。一方で、技術力を磨いてきた中国電池材料メーカーの海外拡販もチャンスがあると思います。IKグループのネットワークを生かし、海外拠点の太陽電池メーカーへの拡販も進めていきたいと思います。
※2 Hetero Junction Technologyの略称
稲畑シンガポール
情報電子・化学品・生活産業セグメントを担当しています。インクジェットプリンター業界向け染料・顔料などのVMI※や、太陽電池材料ビジネスのほか、情三本部が中部電力グループと取り組んでいるバイオマス発電所の燃料となるPKSのサプライヤー管理もしています。
※ VMIとはVendor Managed Inventoryの略で、ベンダー主導型在庫管理のこと
—太陽電池材料ビジネスのきっかけは?
岩橋:シンガポールに製造拠点を置く太陽電池メーカーA社に、太陽電池材料の一つ銀ペーストを販売しています。2015年頃、IKJと稲畑ヨーロッパではHJT型の製造設備を作る装置メーカーに対して銀ペーストのサンプルワークに取り組み、装置メーカーの推奨材料として認定されました。2017年にHJT型の開発を決めた太陽電池メーカーA社が、欧州の装置メーカーからHJT型製造装置を購入した際には、稲畑が供給する銀ペーストも採用していただけました。
銀ペーストのサプライヤーとは日本で私が営業担当しており、稲畑シンガポールとしても太陽電池メーカーへの輸出販売した実績があったので、安心してA社への拡販を任せていただくことができました。
—インドの太陽電池市場の特徴は?
岩橋:インド政府は「2030年までに総発電量の再生可能エネルギー比率を4割まで拡大する」政府目標を立て、中でも広大な土地と豊富な日光量を生かした太陽光発電では、日本の2030年の太陽光発電量目標の5倍にあたる500GWに拡大する予定です。インド大手財閥会社もインド政府と連携して太陽電池製造に力を入れており、稲畑の既存販売先のA社を買収し、高温下の温度係数に優れた太陽電池の開発をインドで検討しています。
—太陽電池材料ビジネスの今後の抱負は?
長年太陽電池材料ビジネスに取り組んできた経験をもとに、Aへの銀ペースト販売のほか封止材などの材料を皮切りとして、インドの太陽電池メーカーの開拓を積極的に進めていきたいと思います。
Nick:インド市場では、技術力をつけてきた中国材料メーカーとのシェア争いになります。シンガポールは、東南アジア諸国の中でも特にインドとの歴史的関係が強い国です。インドと中国の経済交流地点になり、両国のビジネスに介在する絶好の国です。太陽電池メーカーの厳しい要求に応えてサプライヤーと協力してビジネス拡大に取り組みたいと思います。また太陽電池材料にとどまらず、市場拡大する電気自動車材料なども積極的に開拓していきたいと思います。
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