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【2023年4月号】東京本社建替えプロジェクトの舞台裏

2023/03/31

広報部

【2023年4月号】東京本社建替えプロジェクトの舞台裏

2025年秋の新東京本社オープンに向け、2022年12月に仮移転先での業務がスタートしました。
仮移転を主導したのは、東京本社の総務部のメンバーでした。
3年以上の準備期間をかけて進められた一大プロジェクト。
今回の特集では、仮移転の舞台裏とメンバーたちが見据える新しい稲畑のあり方に迫ります。

写真左から。

総務広報室
総務部
荻原 玲子さん
2005年に住環境本部に配属され、営業デリバリとして従事。19年から総務部。

 

総務広報室
総務部
東浦 孝次さん
1992年に入社し精密化学品本部に配属。12年からタイに駐在。15年に帰国し、食品部を経て稲畑ファインテックへ出向。21年から総務部。

 

総務広報室
サステナビリティ推進部
部長代理
吉塚 雅紀さん
1996年に入社し化学品第二本部( 現・情報電子)に配属。02年に化学品本部生活環境グループへ。20年から総務部。21年からサステナビリティ推進部兼務。

 

総務広報室
総務部長
(東京本社建替えプロ
ジェクトサブマネージャー)
山本 勉之さん
1994年に入社し人事部に配属。住環境本部で営業を担当したのち稲畑タイへ駐在。帰国後、人事部を経て総務部。22年7月に総務部長に就任。

 

総務広報室
総務部 担当課長
横山 一郎さん
1990年に入社し化学品第一本部に配属。情報画像本部において大阪本社、三重営業所に赴任し、業務推進室を経て、アイケイファーム余市に出向。19年から総務部。

2022年12月19日。COREDO室町2に仮移転した新しい東京本社で業務が始まった。いつものようにフロアでは「おはよう」とあいさつが交わされ、各所で仕事の打ち合わせやチーム内での雑談に花が咲く。稲畑にとってはいつも通りの執務風景だ。この“いつも通りの東京本社”を仮移転先でも実現できた裏には、3年以上奮闘し続けた総務部メンバーの存在があった――。

Chapter1

プロジェクト始動

数十年先の稲畑に、何を残せるか?

 東京五輪が幕を下ろした2021年9月末。19年から水面下で動いてきた本社移転のプロジェクトがいよいよ動き出す。緊張と高揚感の中、総務部メンバーに与えられたミッションは、4代目となる新社屋の2025年オープンをゴールに、別のオフィスへの仮移転と新本社完成後の再びの移転を滞りなく遂行することだった。
 直近のマイルストーンは22年冬にオフィスを仮移転させること。しかし、メンバーが見据えるのは、もっと先にある未来の稲畑の姿だった。今後数十年にわたって利用される新本社はどうあるべきか。まず始めるべきこと、それはそこで働くことになる社員の声を聞くことだった。サブマネージャーを務めた山本は、立ち上げ当初をこう振り返る。「総務のメンバーには『社員ファースト』のスタンスでプロジェクトを進めていこうと呼びかけました。IK Valuesでは『顧客の問題を顧客の立場から解決し、顧客のベストパートナーになる』ことを掲げています。総務部にとっての『顧客』とは、社員のこと。このプロジェクトで総務部が達成すべきことは、皆さんの声に寄り添い、オフィスに反映していくことだと考えたんです」
 国内外多数の企業のオフィスをコンサルティングしているCBRE社をパートナーに迎え、総務部は早速、社員の声を吸い上げるための施策を打ち出した。

「働きやすいオフィス」の解像度を上げる

 21年秋10月、全社員を対象としたワークプレイスアンケートを実施。さらに、労働組合からの協力を得て、4回にわたって30~40代の若手を中心としたヒアリングやフリーアドレスを取り入れている他社オフィスの見学会を開催した。
 そこで寄せられた声をいくつか紹介しよう。「コラボレーションが生まれやすい環境が必要」「個人ワークスペースを充実させてほしい」「オフィスと在宅、両方の勤務をフレキシブルに進めるためにペーパーレスのさらなる推進
を」。より成果の上がる仕事環境を求める期待の大きさがうかがえた。

 一方で、描く理想のオフィス像も社員によって多様であることも明らかになった。これは総務部メンバーにとって大きな発見だったという。コンセプトづくりに尽力した吉塚はこう振り返る。「部署や職種によって働き方が異なる中で、できるだけ多くの社員の声に応えられるオフィスをどうつくり上げていくか。本部ごとの働き方の実態をより理解していく必要があると考えました」。全本部長・室長に対してもヒアリングを重ね、それぞれの部署が思う「働きやすいオフィス」の解像度を上げていった。

Chapter2

“稲畑流”、それは究極の「社員ファースト」

段階的にフリーアドレス制・ペーパーレスを導入するには

 社員から集まった声は、22年3月の会議で社長や役員たちへ届けられ、「社員にとって使いやすく、働きやすい」「社員の心のよりどころで集まりたくなる」「意識・無意識に周りからの情報収集で成長できる」「人材が集まる、
人に誇れる」の4点が新本社のあるべき姿として取りまとめられた。
 その達成の鍵を握るのはフリーアドレス制とペーパーレスの推進と位置付け、仮移転先で過ごす3年間をトライアル期間として、社員の実態に即した“稲畑流”のフリーアドレス制・ペーパーレス推進のあり方を探っていくこととなった。
 総務部は会議を毎週開催し、CBRE社を交えてアイデアを出し合った。白熱した議論から辿り着いた1つの答え、それはグループアドレス制だった。執務場所を組織ごとにある程度指定することで、生産性のアップと新たなコラボレーション発生の両立が期待できる。
 仮移転先が決まり、フロア全体のレイアウトの検討が進められる中、荻原は社員目線での細やかな配慮を忘れなかった。「季節や天気、時間帯などさまざまな状況においても過ごしやすいレイアウトを追求しました。特にこだわったのは飲料ブースです。例えば、あえて抽出に時間のかかるコーヒーメーカーを導入したのは、おいしいコーヒーを飲んでいただきたいという気持ちもあるのですが、それ以上に待ち時間で新たな交流が生まれることを期待したんです。また、場所によって飲料の種類を変えることで、社員が社内を回遊するきっかけになればと考えました」。あえて本部と本部の間にラウンジスペースを配置するなど、これまでの本社にはないオフィスの構想が固まっていった。

丁寧な対話を通じて、変化への抵抗感を払拭

 しかし、総務部が描いたオフィス像を一方的に押し付けるのではうまくいかない。個人の机がなくなったりペーパーレスが進んだりすることで、稲畑のFace toFaceのコミュニケーションという優れた企業文化が失われてしまうのではないか。そんな社員の懸念を払拭する必要があるとメンバーは感じていた。横山は言う。「当たり前だったことが当たり前でなくなることへの抵抗感を持つのはある意味当然だと思います。しかし、『今のやり方が一番いい』という思い込みは、逆に自分たちの成長を妨げているかもしれません。私たちは、そのことを丁寧に説明していきました」
 延べ300人以上が参加した、東京勤務の社員を対象としたオンライン説明会を担当した東浦も頷く。「『自分の机がなくなるなんて信じられない』『そんな働き方はできないよ』といった厳しい意見もいただきました。皆さんの本音をまず受け止め、疑問や懸念について1つひとつ解決に向け説明していきました。対話しながらご理解いただく場を設けたことはとても効果的だったと感じています」と振り返る。

新しいシステムがペーパーレスを後押し

 他部署との連携も、新しい働き方への理解促進の追い風となった。デジタル推進室が進めていた文書管理システム「IK Work flow System」などにより、ペーパーレスに対応できる業務の幅が一気に拡大。広報部には、仮移転のフローや働き方を解説する5通のメルマガを発行してもらった。 数々の施策に込められた共通のメッセージ。それは「一歩踏み出す勇気を」。多方面のアプローチで思いを伝えていった結果、新しい働き方に対して前向きな姿勢を示してくれる社員が1人、また1人と増えていった。

Chapter3

仮移転で見つけた新しい強み

過酷なラストスパート

 仮移転先での営業開始日まで1ヵ月を切った昨年11月、エクセルの進捗リストには「未達」の文字が並んでいた。「文字通り、お尻に火がついていましたよ」。メンバーたちは苦笑する。
 理由は、仮移転先との交渉項目が当初の想定よりもはるかに多かったこと。仮移転先はオフィスを間借りする形となるため、これまでの自社ビルのように自由にコントロールできない部分も。吉塚は管理会社と何度も打ち合わせをし、ゴミ箱の配置から空調の温度に至るまで、細やかな調整に奔走した。
 このほかにも準備は山積みだった。横山は新しい名刺を400人分、社外向けの案内状1600件を急ピッチで制作。荻原は全社員分の個人ロッカーを振り分け、1つひとつ名刺を差し込んでいった。「12連勤した時はさすがに体力の限界を感じました。それでもみんな、黙々とやるべきことをクリアにしていました」と荻原。メンバーは休日出勤も厭わず準備を進めた。チームを突き動かしたのは、「社員の皆さんのために」という熱い気持ちだった。

新しい稲畑が始まった

 2022年12月19日、週末の土日2日間にわたる引っ越し作業を経て迎えたCOREDO室町2での営業開始当日。普段よりも多くの社員が出社する中で、メンバーがようやく安堵できたのは就業時間が終わった頃だった。横山は、「大きなトラブルもなく、じわじわと安心感が広がっていきました。いつも通り営業できることがこんなにもうれしいことなんだな」と振り返る。荻原が選び抜いたコーヒーサーバーは、時に行列ができるほどの人気ぶり。「正直、どんな反応が得られるか緊張していました。狙い通りコラボレーションの一助になっていて、自分たちの思いが通じたのかなと思います」。
 「今回の仮移転を通じ、メンバーはもちろんのこと会社としても挑戦の風土を育むことができたと感じています」と吉塚は語る。21年に総務へ異動と同時にプロジェクトに加わった東浦は、「正直、参加した当初は『社員ファースト』が何を指すのかよくわかりませんでした。でも、新しい働き方を理解してもらえるための説明方法などを議論していく
うちに、対話の大切さに気付きました。総務部の仕事はなかなか社員の皆さんの反応がわかりづらい業務が多いのですが、今後も寄り添うための努力を続けたいと強く思います」。

ゴールはまだまだ先にある

 マイルストーンは1つクリアしたが、プロジェクトは道半ば。「新社屋でより良い働き方が実現できた時、ようやく達成感を噛み締められると思います」と東浦。現在は新社屋の設計と、自社ビルに戻った際の働き方の検討へとフェーズが移っている。
 山本はここまでの取り組みを振り返ってこう語る。「何より、社員の皆さんの声がプロジェクトの推進力になりました。非常にチャレンジングな働き方へとシフトしましたから、皆さんも不安に思うことがあったはずです。しかし、稲畑の未来を考えた建設的な意見を多く寄せていただいたことで僕らも挑戦することができたんです。この3年間はトライアル期間ですから、これからの意見や感想もしかと受け止め、“稲畑流”の働き方をさらに突き詰めていきます」
 「社員ファースト」。彼らは今日もその姿勢で稲畑の未来像を描いている。

東京本社建替えプロジェクトマネージャー
総務広報室長
天野 勝也さん

東京本社建替えプロジェクトマネージャー
総務広報室長
天野 勝也さん

 今回の仮移転プロジェクトに関しては、まだ総務として経験が浅いメンバーが労を惜しまず、よく頑張ってくれました。
 また、デジタル推進室メンバーを中心に、たくさんの関係者にご協力をいただいたことに深く感謝申し上げます。皆様のおかげで同プロジェクトは概ね成功したと感じております。それ故、新社屋への期待も高まり、ハードルも上がったと思います。
 立地・景観等は変えられませんが、会社の象徴となり、人が集まる新社屋にすべくまい進します。引き続き、社員皆様のご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。

CBRE株式会社
Senior Consultant
遠矢 敏靖さん

CBRE株式会社
Senior Consultant
遠矢 敏靖さん

 本プロジェクトにワークプレイスコンサルタントとして参画し、今回の仮移転時には、皆様への情報共有(ニュースレターやオフィスツアー)のサポートをさせていただきました。
 一般的に、働き方の変革には大きな反発が伴います。今回皆様も固定席環境からABW(アクティビティベースワーク)を取り入れた先進的な働き方へ移行され、懸念や不安があったかと存じます。そんな中、総務部の皆様による丁寧なコミュニケーションや運用ルールの共有などにより、スムーズにご移転を完了されたと考えております。
 今回の仮移転による変革を第一歩とし、新本社にて、より快適かつ生産的な働き方を実現されることを祈念しております。

タイムライン

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